カンボジア王国で行った記者会見について当弁護団員がカンボジア王国で刑事訴追されましたが、無事、無罪判決が確定しました。

(1)カンボジア王国での記者会見
 当弁護団では、平成26年5月28日、当時、新たな販売会社等を使うなどして被害が拡大していたことから、さらなる被害拡大防止のための活動の一環として、カンボジア王国内で記者会見を開き、カンボジア不動産投資被害事件の実情や、その首謀者が在カンボジアの今野郁男であることなどについて報告し、広くカンボジア王国内のマスメディアで取り上げられました(記者会見についてのご報告はこちらをご覧下さい)。

(2)今野郁男による刑事告訴とカンボジア王国検察庁による起訴
 この記者会見に対し、今野郁男は各種のメディアで反論を行うなどしたほか、平成26年5月29日、カンボジア弁護士を代理人に立てて当弁護団員をカンボジア王国で刑事告訴を行いました。そして、約3年を経た平成29年4月28日、プノンペン第一審裁判所付属検察庁は、弁護団長瀬戸、事務局長葛田、事務局次長江川の3名が、カンボジア刑法第305条(名誉毀損罪。法定刑:罰金10万リエル~1000万リエル。米ドル換算で25米ドル~2500米ドル)の罪名で起訴しました(今野郁男が付帯私訴原告となっています。)。この起訴にいたるまで、カンボジア王国の捜査当局から当弁護団への連絡や事実確認などは一切なく、起訴の事実を知ったのも、平成29年11月2日になってからでした。

(3)無罪判決獲得を目指した裁判対応
 当弁護団では、裁判で、記者会見がカンボジア被害拡大防止という公益目的によるものであること、会見内容が真実であることなどを主張して無罪判決を獲得することにし、カンボジア王国のS.V.P 法律事務所(http://www.svpkh.com/)のLY CHANTOLA 弁護士(登録番号581)、及び TIM SOPHEAP 弁護士(登録番号1245)を弁護人として選任しました。
 そして裁判には、弁護人と協議を重ねて準備をした多数の証拠(当弁護団が日本の民事裁判で獲得した、今野郁男が事件の首謀者であることなどを認定する多数の民事判決書、カンボジアの刑事裁判に証拠として提出する目的で謄写が認められた関係者を被告人とする刑事判決書確定記録として同刑事裁判の判決書、日本のメディアによる各種報道等)を裁判所に提出しました。

(4)公判期日
 平成30年3月26日に公判期日が開かれ、被告である弁護団側は弁護人2名のみが出頭し、付帯私訴原告である今野郁男及びその代理人は欠席しました。期日では、検察官は、日本法の無罪論告に相当する論告を行い、弁護人側は無罪主張の弁論を行い結審しました。

(5)判決言渡しと確定
 平成30年4月6日、プノンペン第一審裁判所付属検察庁は、以下のとおり事実認定をして、弁護団員3名に無罪判決を言い渡しました。
①「KONNO KAKADA (注:今野郁男のカンボジア名)が確かに日本人を騙した詐欺の首謀者であることは明らかである。」「記者会見において(弁護団が)が述べていたことは、KONNO KAKADA に対していかなる悪意をもって罪をかぶせる若しくは誇大な主張ではなく、つまり、述べていたことは事実である」
②FIRST不動産、ユニバーサルマックスの詐欺及び日本国民を騙したこの一連の詐欺事件に関わっているKONNO KAKADA の実名を上げての記者会見は、合法的に行われたものであり、弁護団設立の目的に沿ったものである。
 そして、この判決は、検察官も、付帯私訴原告である今野郁男も控訴をせず、平成30年7月18日に確定しました。

 この無罪判決獲得にあたり、弁護人を務めて頂いたS.V.P 法律事務所のLY CHANTOLA 弁護士、及び、TIM SOPHEAP 弁護士に改めて感謝申し上げます。
 また、カンボジア法制度の発展にご尽力されているJICAが公表しているカンボジア刑法刑事訴訟法の各訳文も参考にさせて頂きました。ありがとうございました。

【刑事判決書の第1ページと最終(第9)ページ)】

カンボジア刑事判決_01
カンボジア刑事判決_02